2003/12/5(金)生筋子からイクラをいくらか作る
曇天模様の空の下、蕾のままで揺れながら駅前のサカナが新鮮な方のスーパーへ夕飯を買いにいく。値段がほぼ同じスズキとワカシとメジマグロの三択から、週末なので一番赤い奴を選択。ちなみにメジマグロはマグロの子供。さて、ワカシと掛けまして、松田聖子の仕草ととく。その心は、どちらもブリッコです。ああ、なんか今、自分にがっかりした。
ガッカリしながら他のサカナを見て歩くと、おお、新巻鮭がぶら下がっている。もうそんな時期ですか。一度新巻鮭っていうのを捌いてみたかったので、「店員さん、そこの一番太い辛塩のヤツちょうだい。」といってみようかと思ったけど、どうせ買うならアメ横がいいやと、新巻鮭の隣にあった生筋子を買い物カゴへ。一度生筋子からイクラをつくってみたかったんだな。
油性マジックで価値を下げられた生筋子一腹を750円で購入し、ちょっと急ぎ足で帰宅。メジマグロをヅケ丼にしてパパパっとかっ込んで、イクラ作り開始。あ、このメジマグロすげえうめえ。
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生筋子。始めて買ったよ。 |
ボクは鮭の遡上しない街、埼玉で育ったのでイクラの作り方なんて知らない。実家にいる母親も長野育ちなので知らない。石狩川は遠い。なので仕方なくインターネットで検索したらすごいたくさんでてきた。生筋子からのイクラ作りは結構メジャーな行為らしい。google調べ。
いくつかのサイトを閲覧して、簡単そうでちょっと蘊蓄のある方法を自分の都合いいようにハイブリッドして採用。芋焼酎「さつま島美人」を500mlペットボトルに入ったサントリーの天然水で割って飲みながらイクラ作りを開始。まずはお風呂ぐらいのお湯に塩を富浦の海水ぐらい溶かす。富浦の海水は舐めるとおいしい。どうでもいいが、埼玉に住んでいた頃、よく料理の本とかに「海水ぐらいの濃さの塩水」とか「海水よりちょっと濃いくらい」とか載っているのを見る度に「舐めたことねえよ!埼玉県民が海水舐めてたまるか!」ってイチイチむかついていた。若かったね。
しょっぱいお湯に生筋子をドボン。これでちょっと半生筋子になるわけですね。塩を入れるのは真水でほぐすとイクラが堅くなってしまうから。別に味付けのためじゃないです。お湯を使うのは筋子をほぐしやすくするため。別に冷たくて辛いからじゃないです。ちなみにイクラは70度で凝固するので、手を入れられる程度のお湯なら茹だらない。ってインターネットに書いてあった。ガッテンガッテン。
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ちゃぷちゃぷ。 |
で、半生筋子をやさしくいじくって、筋から子をバラバラにはずしていく。これはなかなか艶めかしい感触が楽しいなと。全部ほぐすと手には筋だけ残った。なかなかグロテスクでよろしい。さすが鮭の胎児。
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おお、気持ち悪い。 |
ほぐし終わったら、目につく筋を取っ払って、ザルにあける。で、もう一度しょっぱいお湯を作ってもう一度ざざざっと洗い、またザルへ。おお、オレンジの粒々が40Wのパルックボールに照らされて大変美しい。ここまでくるともう筋子ではなくイクラだな。一粒つまんでそのままお口へ。おお、生臭い。さすが味付け前。ザルにイクラを入れたまま塩を小さじ半分ほど掛けて軽く混ぜて放置。これで生臭さがとれるはず。ブリ大根の下ごしらえみたいだ。
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輝くイクラ。 |
あとはフタのできる容器にいれて味付けすればできあがり。容器はこんなこともあろうかと取っておいたキムチの入れ物だったりする。雑菌が入るといけないので、お湯を沸かして熱湯消毒せねばと鍋でお湯をグラグラ沸かす。フンフンフンと鼻歌を歌いながらキムチの入れ物に熱湯をかけて消毒。おお、薄いプラスチック製の容器が見る見るうちに形が変わっていく・・・。耐熱容器じゃなかったのね。キムチを暖めて食べるヤツはいないから当たり前か。
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ベッコベコになっちゃった。 |
ああ、自分の馬鹿さ加減がイヤになる。とっておきのキムチ容器は、すっかりボッコボコに形の変わったフタが閉まらない役立たずの廃棄物になってしまった。我が家にはもう手頃な容器はない。無い物はしょうがないので、とりあえず密閉できる容器ならいいやと手元にあった天然水を全部コップに入れてしまい、カラのペットボトルにする。このペットボトルも熱湯に耐えられるか不安だったので、飲んでいた芋焼酎を1センチほど注いでフタをしてよく振って中身をコップにあける。たぶんこれでペットボトルの内側がアルコール消毒できたはずだ。もうなんでもいいや。
なんかだし汁とかを混ぜると美味しいらしいが面倒なので、たぶん同じ効果があるだろうと、ダシ用コンブを細く割いてペットボトルに放り込む。で、漏斗を使ってザルから500mlのペットボトルにイクラを流し込む。が、当然ヌルヌルしたイクラがスムーズに入っていく訳もなく、詰まった漏斗をドンドン叩いて無理矢理落とし込む。ああ、イクラが割れないか不安で胸が一杯。
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おっかないよう。 | はいらないよう。 |
どうにか全部のイクラを詰め込む。ペットボトルの三分の一にイクラが詰まった。思ったより少ないな。ここに醤油と酒を一対一で割った付け汁をヒタヒタに浸かるぐらい入れてフタをして冷蔵庫へ。ふう、いろいろと疲れた。
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なんとか入った。 | 上から見たイクラ。 | タレに漬ける。 |
四時間経過。本当は一晩寝かす物らしいんだけど、そんなに待てる訳がない。さっき準備しておいた山形から届いた新米も炊けたようなので、さっそくイクラ丼にしていただく。
もう夜中なので、茶碗に半分ほどご飯をよそって、ニヤニヤしながらイクラの入ったペットボトルを傾ける。ジリジリとじらしながら重力に負けてずり落ちてくるイクラ。かわいいヤツ。先に漬け汁だけが落ちてくるのを避けつつ、イクラをドボドボと注ぐ。醤油が漬かったイクラはさらに輝きを増し、ナショナルの30W蛍光灯の下で怪しく輝いている。新米の白にイクラのオレンジが映えまくり。「艶っぽい」っていうのはこういうものをいうんだろうな。しかし、イクラをペットボトルから注ぐっていうのは日本人としてどうなんだろう。
当社比1.5倍のイクラが乗ったメシを軽く箸でかき混ぜて、ガガガっと食う。
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新米とイクラ。 | ドブドブドブ。 | ツヤツヤですわん。 | おいしいおいしいおいしい。 |
うめぇ〜。
いやあ素晴らしいかな手作りイクラ。回転寿司の乾いた冷凍イクラと全然違うね。当たり前だけど。一粒一粒が口の中でつぶれる感触が素敵すぎる。イクラ丼がこんなにおいしいものだとは知らなかったよ。とりあえずおかわりしないと。大盛りで。
750円でイクラ丼が三日は腹一杯食べられるっていうのは素敵なことだ。
ああ、鮭釣りにいきたい。