2004/6/14(月)釣りたてアカエイ料理 刺身、煮物、煮こごり

※マネをしてエイに刺されたり、食あたりしたり、寄生虫を煩ったりしても責任持てません。すべては自己責任で。アカエイは本当に危ない生き物です。


富士屋ボートの「煮て食うとうまいよ!」という熱意にほだされ、思わず持って帰ってきてしまったマンタ。ではなくてアカエイ。クーラーボックスのビニール袋から引っ張り上げる。重い。思いの外重い。圧倒的な存在感を放つその獲物は、今まで釣り上げたどんな獲物よりも重い。実家の猫より重い。「エイはペラペラした乾いた生き物」という居酒屋のエイヒレを食べることで仕入れた私の概念は変えなければならないようだ。

洗い物を片づけた流し台にまな板を置き、エイをベロンと横たわらせる。このとき、「エイ!」とベタなかけ声をかけるのもいいだろう。釣り上げられてから六時間ほどが経過したエイの表側は、ローション塗ったF-117ステルス戦闘機、裏側はアルゼンチンあたりで捕まった宇宙人。ああ、未知との遭遇。どこが食べられる部分なのか、これが何人分の食材なのか、どんな味なのか。何もかもがピンとこない。

レーダーに引っかからない感じの外観。 宇宙人。

まずは捌かないと食材として認識ができない。台所奧の書斎(兼寝室兼リビング兼PCルーム)から、捌き方が載っていそうな本を取り出してページをペラペラと捲る。しかし、ページをいくら捲れどアカエイの捌き方はどこにも載っていない。普通の料理本にはまったく触れられていないし、釣り料理の本でも「毒魚」としての扱いであり、「釣れたらハリスを切ってリリースしましょう」と正論が書いてある。それは情報としてとっても正しい。

しかし、私が今知りたいのは「逃がし方」ではなくて「捌き方」。もうまな板の上のエイなのだ。とりあえずYahoo!でエイの捌き方を検索するも、出てくるのはこんなんで、全く役に立たない。それでも検索を続けていくうちに、ヨーロッパではムニエルにして食べたり、韓国や東南アジアでは刺身やフライで食べたり、日本でも煮こごりや煮付けで食べるらしいことがわかった。富浦のボート屋が煮て食べているんだから全世界でも食べられていても不思議はない。

捌き方は、左右の鰭と胴体を切り離すところまではなんとなくわかった。とりあえず鰭を落とそうと裏側から尻尾近くに包丁を入れると、切断した尻尾のところから発情期の犬の○○○のようなイチモツが飛び出てきてちょっと焦る。それにめげずに胴体の堅いところに沿って包丁を進めると、今度はアンキモみたいな肝臓がはみ出てきた。負けない。そのままザクザクと鰭を切断して、切り口から内臓をすべて引っ張り出す。よくいわれるようなアンモニア臭さは全くない。新鮮な魚を捌いているのと変わらない魚のニオイがするだけだ。ただ、プリプリの内臓はパンクバンドにおける豚の臓物状態。魚を捌くのに多少慣れている私でもちょっと腰が引ける。嗅覚よりも視覚に訴えてくる食材だ。

ぷにゅっとした。ぷにゅっと。 あるれる肝臓。あふれる感動。

内臓を引きずり出す。 エイの三枚おろし。

反対の鰭も同様に切り落として、無事アカエイの三枚おろし完成。アジの三枚おろしとはだいぶ仕上がりが異なるため、いまだ食材としてのイメージはわかない。内臓はどの部分もプリプリしていて食べれば美味しいような気もするが、知識なしに山から採ってきたキノコ並に危険がいっぱいなので捨てる。
※内臓を取り出すところで壁紙をつくったのでお好きな方はどうぞ。

三枚に下ろしたエイを適当な大きさに切り分けてザルに並べたら、ヌルヌルがとれないかなあと祈りを込めて塩を振る。生まれて初めてじっくり見たエイの身は、メカジキのような、ほんのりピンクがかった身に規則正しく赤身がサンドされた不思議な模様。ヒレが常に動かしている筋肉であることを表す独特の造形だ。

厚みのある部分を一切れ取り出し、皮を剥いで刺身にしてみる。今まで食べてきた魚のどれとも似ていないその刺身は、なにもつけないでそのまま食べてもクセがまったくなく、「うまい!」というほどの味はないが、少し甘みがあり、十分食べ物として成り立つ味だ。食感はプニプニとしていて、全身がヒラメの縁側みたいな感じ。

ザルいっぱいのエイ。 皮を剥げば、それはもう食品。

プニプニ。全然臭くないです。 ワサビ醤油でペロンといただく。

刺身もいいけど、煮物もね。醤油と酒と昆布だしで適当な煮汁を作り、皮がついたままのエイを煮る。富士屋ボートのいう煮物と同じ味付けかはわからないが、煮物だけに似たようなものだろう。さらに余ったエイは、熱湯で軽く茹でてみた。これにトマトソースとチーズをたっぷりかけて、オーブンで焼けば、ロッキーも大好き「エイドリアン」になるのだろうか。

煮て食うとウマイらしいが。 茹でると結構アクが出る。

茹でエイ。

エイ料理を食卓に並べて楽しい食卓。エイの刺身は、韓国風にキムチと一緒に食べてみた。エイの元々の味があまりないので、ワサビ醤油でもキムチ和えでも酢みそでもポン酢でもなんでも合う。ちなみに、エイは背側と腹側の間に軟骨があり、背側の方が肉厚で美味。

茹でたエイは、酢味噌をつけてモリモリと食べる。味はあっさりとした筋繊維。一本一本の筋肉繊維が太い。清原とかが鶏胸肉の代わりに食べるがいいだろう。マヨネーズつけて食べると美味しい。

さて、本日のメイン、エイの煮付け。まずくはないけれど、労力の割に美味しくない。煮汁の味付けが下手くそなのと、煮た時間が短かったからか、味がちっとも染みこんでいない。ついでにいえば、皮は剥いでから煮た方がいい。これらはすべて素材を生かせなかった料理人の問題だと思う。本来は「煮て食うとうまい」はずだ。

次回食べることがあるのかどうかわからない食材こそ最大限の調理をしないと、悪い印象のままで生きていくことになり、それはもったいないかな。どうせ珍しいモノを食べるのなら、美味しいという印象を持ちたいし、「やっぱり美味しくない」よりは「予想以上に美味しい」と人に伝えたいので。

エイ定食。 エイの刺身。キムチと一緒に食べる。

茹でエイ。筋繊維そのもの。


次の日、食べ残してしまったエイの煮付けを食べようと冷蔵庫から出したら、煮汁が見事にゼリー状に固まっていた。なるほど、これが煮こごりか。エイはそんなにゼラチン質の食べ物という感じはなかったけれど、実はゼラチンタップリ健康食品らしい。そう思うと自分の肌つやがよくなっている気がする。

固まってしまった。 ゼラチンたっぷりらしい。

このまま食べてもいいけれど、せっかくなので、ちゃんとエイの煮こごりを作ってみることにした。当然全く作ったことはないので全部フィーリング。調べる気なし。まずは煮汁から身を取り出し、その身をスプーンでこそげ取る。この時点でつまみ食いしてみたら、昨日より味がしみていて美味しくなっていた。

集めた身は細かくほぐして、千切りにした絹さやと合わせておく。残った皮と軟骨部分をゼラチン状の煮汁に戻して火にかけて、煮汁が溶けたらザルで漉す。器にほぐした身を盛り、煮汁と合わせたらラップをして冷蔵庫へ。

きれいに身が外れます。 つまみ食いしたら美味しかった。

細かくほぐしてサヤエンドウと和える。チンジャオロースならぬ珍獣ロースか。 アラを入れたゼラチン状の煮汁を温める。

ザルで漉す。 煮汁と具材をまぜたら冷やして完成。


次の日、冷蔵庫の中から冷えて固まったエイの煮こごりを取り出すと、見た目的には予想以上の出来映え。ゼラチンも寒天も使わないで煮こごりができるという事実に少し感動。カレー用スプーンでざっくりすくって、食べてみる。煮こごりになることを考えずに作ったため、ちょっとしょっぱいけれど、煮汁がプルプルしていてなかなか美味しい。口に入れるとトロンと溶けて、身とサヤエンドウが舌の上に残る。ビールに合う。

とはいっても、やはり煮凝り。通常は前菜とかでちょこんと出てくるモノだ。生クリームタップリのケーキと同じで、ホールで食べるようなものではない。珍味の類は物足りないくらいがちょうどいい。

エイの煮凝り完成。量が多い。 このくらいで十分だ。


エイ、次はもっと美味しく食べられると思うけれど、しばらくはいいかな。これからエイに関しては、たまたま釣れてしまったら食べるというスタンスで生きていこうと思う。

基本的に美味しい食材なんだけれど、一人で食べるにはちょっと多いので。


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※マネをしてエイに刺されたり、食あたりしたり、寄生虫を煩ったりしても責任持てません。すべては自己責任で。アカエイは本当に危ない生き物です。

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