恵方巻きを作ってみる:私的標本


02/4(土)恵方巻きを作ってみる

二月四日は節分の日。の、次の日。本当はちゃんと三日に豆を撒いて恵方巻きを食べるお祭りでもしたいねえっていっていたんだけれど、あいにく平日だったので四日に順延。体育の日や成人式の日が年によって変わる時代、日付よりも大人の事情の方が大事なのだよ。そんな訳で、卵爆弾およびその他諸々で有名なとりくん(仮名)の家に四日の四時集合ということで、鞄に海苔とのり巻きを作るスダレみたいなヤツ(名前忘れた。マキスだっけ?)を入れて、四時過ぎに出発。はい遅刻決定。

で、五時に到着したのだが、いたのはとりくん一人きりだった。おっと、一時間くらいの遅刻では、ちょっと早く来すぎたようだ。とりくんが「恵方巻きの材料をいろいろ買っておきました」といって見せてくれたものは、海苔、生卵、キュウリ、すしのこ、以上。いや、ちょっとそれじゃあ寂しすぎやしないかい。確か、恵方巻きっていうのは、具を七福神にかけて7種類入れると縁起がいいらしいぞ。福神漬けは入れちゃダメだよ。ということで、どうせまだ誰も来そうにいないので、再度お買い物へいく。

具が卵とキュウリだけは寂しいの。

ええと、恵方巻きの具っていうのは、何が正しいんだろうね。まあ、あれだ、いっぱい適当に買って、好きなヤツを7種類巻けばいいよねっていうことで、食べたいものを適当に買う。

食べたいものを買いました。

買い物から戻ってきて、卵を焼いたり米を炊いたりしていたら、七福神の一員みたいなNさん(仮名)が「福は内〜!」と豆をまき散らしながらやってきた。狙いはもちろんとりくんだ。すごい楽しそうに豆をぶつけていて、大変愉快である。日本の伝統文化っていいですね。

鬼は外〜。

福は内〜。

とりあえず節分らしく所かまわず豆をまき散らしたところで、まだ何人かくるらしいけれど、お腹が減ったのでみんなの到着は待たずにさっさと恵方巻きを開始する。

■用意した具
・ 出し巻き卵(ちゃんと焼いたよ。)
・キュウリ(とりくんセレクション。)
・貝割れ(絵的に。)
・大葉(葉っぱも入れたい。)
・かにかま(すげえ久しぶりに食べるな。)
・たらのでんぶ(あまいピンクのやつね。とりくんはでんぶの存在を知らなかった。)
・ かんぴょう(味のついたヤツを買ってきた。とりくんはかんぴょうの存在を知らなかった。)
・ウナギ(夏バテ防止。釣ったヤツではないよ。)
・豚の冷しゃぶ(茹でて醤油、塩、胡椒などで下味をつけた。)
・お刺身盛り合わせ(マグロ、イカ、ハマチ、甘エビ。)
・さくらもち (Nさんのお土産。具じゃない。)

おお、なんとなくゴージャス。

さあ、好きなのをお選び。

準備が万事整ったところで、「恵方巻きとはなにか」という今頃になってわき起こってきた素朴な疑問を関西出身のNさんにぶつけてみる。なんでも「関西のどっかの米屋と海苔屋が商売繁盛のために始めた大食い大会が原点なんで、歴史は全然ないよ。この時期に新しい海苔がとれるんだって。」との事。おお、さすが関西。関東人が土用の丑の日にウナギ食べるのと変わらないレベルのイベントらしい。で、この恵方巻きを恵方(その年の干支によって定められる、最もよいとされる方角で、今年は南南東らしい)を向きながら、一気に食べると幸せが訪れ、願い事が叶うらしい。お腹がいっぱいになってなおかつ願い事が叶うなんて素敵だね。喉に詰まらせて死ぬかもしれないが、きっとそれだけの価値があるのだろう。

そもそも恵方の方角は〜。

まずは家主権限ということで、とりくんから作成スタート。何事も一番は縁起がいいのだ。さあ、がんばって七種類の具を巻きなされ。参加者全員が今イチ米と具のバランスがわからなかったので、実験台ともいう。人の振り見て我が振りなおそうキャンペーン。

いいかげんダウン脱ぎなさい。

恵方巻きの具として、一番最初にセレクトするのが明太マヨネーズっていうのは、きっと深い理由があるのだろうということで、以下のようなセレクトに。節分期間サービスということで、Nさんから大豆も一粒プレゼント。やさしいのである。これで具が8種類になっちゃっているけれど、まあ気にしない。

大豆がアクセント。

続きましてNさん。餅つきのときもそうだったんだれど、この人はなにをやっても「その道のプロ」に見えるね。そんな訳で今日は「恵方巻きのプロ」になっております。

なんとなくありがたい。

具は卵を真ん中に置き、マグロ、カンピョウ、カニカマ、カイワレ、でんぶ、豚肉と、和洋折衷古今東西をバランスよく巻き込む。ここで恵方巻きワンポイント、生魚を包むときは、醤油をつけてから入れよう。食べながら醤油をつける余裕はないよ。

まあおいしそう。

そして私。一つ一つの具材に熱い思いを込めてっと。
ブタ(ぶた(ブタ)ない)
キュウリ(急に(キュウリ)暴れない)
カイワレ(無駄な買いだめ(カイワレ)しない)
ウナギ(サウナギ(ウナギ)リギリまで入らない)
カンピョウ((寛容)カンピョウな心持ちで)
デンブ(全部(デンブ)抱きしめて)
タマゴ(やったマゴ(タマゴ)チが釣れた)

いや、今考えたんだけれどさあ。

これで一年バッチリだ。

ええと、巻いてみるとなかなかボリュームがあるね。普通に一食分のゴハンとオカズだな。

でかいなー。

さて、準備ができたなと。あとは、これを南南東を向いて、無言で噛み切らずに一息でモグモグと食いきれば、きっと向こう100年くらいは幸せに生きれるであろう。なんか願い事も叶うらしいぞ。そんな訳でセルフタイマーで撮影開始。

スタート。

モグモグと食べる。最初に口にくわえた瞬間、「あ、こりゃ無理だ」と思うボリュームである。そして何も言わずにシャッターを何度も押しに行く私。

太いよ。

恵方巻きっていうのは、噛み切らないで食べる必要はあるんだけれど、早く食べる必要はない。でもね、男3人が並ぶと自然に「誰が一番早く食べられるか!」を競ってしまうのが性(さが)というもの。とか考える間もなく、Nさんが速攻完食。さすが恵方巻きのプロである。早い。

Nさん早!

私ととりくんがどうにか半分くらい食べたところで、急にとりくんが苦しみだした。明らかにNさんがサービスで入れた大豆が喉に詰まってもがいている。死にそうである。それでも口から恵方巻きを離さない君はえらい。でもお願いだから笑わせないでくれたまえ。吹き出しそうになるじゃないかい。

苦しむとりくん。

どうにか大豆ステージを通り越し、もう一息。お茶が欲しい。あ、そうだ、願い事だ願い事。ええと、とりあえず明日私はヒラメを釣りにいくらしいので、大漁祈願。ヒラメ釣りたい。ヒラメヒラメ。Nさんは食べ終えて余裕の「まる」。もちろん「いいとも」じゃなくて「白鶴」。

苦しい。

苦、苦しい。あとちょっとなんだけれど、それがなかなか口の中に入っていかない。二枚分の海苔が口の中の水分をすべて奪い取る。口が渇く。あんまり苦しいので、願い事がいつの間にか「ヒラメ大漁」から「恵方巻き完食」に切り替わっていてちょっと虚しい。最後、ぽろっとキュウリが一切れ落ちたけれど、それも拾ってエイヤッと口に詰め込んで無事完食。

完食したのだよ。

めでたい!まる!

まる!

なんだ、楽しいじゃないか、恵方巻き。最初に一口目を食べたときは「こりゃ絶対無理!」と思ったけれど、人間やればどうにかなるもんだと身を持って学習したよ。富士山を登ったのに近い達成感がぼんやりと我々を包み込む。いや、ちょっと言い過ぎか。でも、結構うれしいのよ。とりくんはまだ死にかけているけれど。 恵方巻きを食べたことで叶うといわれている願い事は、結局「恵方巻きを完食する!」という大変虚しい願い事になったけれど、これでいいのだ。

いやあ、食べた食べたと腹をさすっていたら、Mさんが遅れて到着。当然恵方巻きを食べていただく。

米追加。

すしのこ久しぶりに見たよ。

一気にいってください。

あ、苦しそう。

あ〜死んじゃう。

でも幸せそう。

頼もしい背中。

続けてT女史登場。この人は「恵方巻きを食べるのが長年の夢だったのよ!」と言い張る変わったお方。せっかくなので、みんなで「ゴハンもっと!ゴハンもっと!」とはやし立て、極太恵方巻きを食べていただく。

ゴハン多いなあ。

でかい。

さあがんばって。

お、いった。

恵方巻きを丸呑みにする人。

吸い込まれていく恵方巻き。

み〜た〜な〜(以下撮影Mさん)。

もだえる。

もだえる。

もだえる。

そして食べきる。

男前である。

そして、豆だけが残った。

掃除はしません。


ここでせっかくなので、恵方巻き話。

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タイトル:恵方巻き

ある雪深い山の中、節分の日に一人の猟師が道に迷っておりました。
ああ、どうしよう、もう食べ物も尽きてしまったし、雪で道が全くわからない。
この山はつちのこが出るといわれている山で、道に迷った旅人がつちのこに食べられてしまうと言い伝えられております。
このままでは死んでしまう、ああどこか避難できる場所はないかとと思ったそのとき、前方に山小屋がみえるではないですか。
おお、これはありがたい。地獄に仏とはこのことか。

どんどんどん、もしもし、道に迷ってしまったのですが、どうか一晩泊めてもらえないでしょうか。
扉がすっと開くと、中からは山小屋にふさわしくない美しい娘がでてきました。
どうぞお上がりなさい。なにもない山小屋ですが、ゆっくりしていってくださいまし。
さあ、体が冷えているでしょうから、湯で体を拭いてあげましょう。
女は素っ裸になった猟師の体をみて「今年は立派な恵方巻きが食べられそうだわ」とつぶやきます。
猟師も男でございます。そんなことを言われて下心が起きない訳がございません。
こりゃあこの後は「俺の恵方巻きを食らいやがれ!」っていうやつですか。
しかし、どうもこの体を拭くお湯が醤油臭い。 まあ何日も風呂に入っていない体ですから、少し醤油臭くても文句はいえません。
体を拭き終わると、女はどういう訳か方角を気にしながら、今年の恵方である南南東を向けてゴザの上に山小屋にふさわしくない磯の香りがする真っ黒な薄っぺらい布団を敷きました。
しかし猟師はこのあとの「夜の恵方巻き」のことで頭がいっぱいですから、布団の事なんで気にしません。

さあ、布団に入ってください。寝冷えするといけませんからこれと一緒に寝てくださいと、絹の寝間着に、芋茎の腰紐、狸の襟巻き、兎の手袋、熊の靴下、頭にはそば殻の枕という不思議な組み合わせでございます。
一、二、三、四、五、六、そしてあなたで7ですね。さあ、掛け布団をかけてあげましょうと、綿の代わりに米が詰まった布団がかけられました。
ではおやすみなさいませと女は灯りを消します。

しばらくすると、猟師は「そろそろ俺の恵方巻きが我慢ならないぜ」と起き上がろうとすると、女が横に立っております。
艶っぽい声で「あなたの恵方巻き、いただくわ」とつぶやきますと、すごい力で布団の下のゴザを持ち上げて、ごろーん、ごろーんと猟師を中心にクルクルと布団を巻き込んでいくではないですか。
びっくりしたのは猟師です。こんなグルグルに巻かれるなんて想像もしていませんでしたが、「お、こんなプレイもいいかもしれない」などと暢気に考えておりますと、女は猟師の足下に廻ります。
猟師がドキドキしながら待ち構えていると、つま先から膝へ、モモへと、生暖かい何かに包まれていく感触が布団越しに伝わってきます。
簀巻きにされていますから、自分がどういう状態になっているのかは見えません。
ヌメヌメドロッとした液体が染みてきました。

シャー、シャー。

おお、これは温かくて気持ちがいい、これが噂に聞くローションプレイかと喜ぶ猟師。

シャー、シャー、シャー。

生暖かい何かが肩口まで包み込むと、生臭い空気が猟師の顔にかかってきます。

シャー、シャー、シャー。

夜の恵方巻きをビンビンにした猟師の目に映ったのは、先が割れた桃色の紐。
それがすごい早さで顔の上をヒュンヒュンと動いております。

シャー、シャー、シャー。

おお、これがムチというものか。
猟師はどこまでも助平でございます。

シャー、シャー、シャー。

さあ、もうちょっとですべてが包み込まれる。
鼻息の荒くなる猟師。


ドーン。

山を下りてこない猟師を心配した仲間の猟師がようやくここを探し当てて、バッと扉を開けて見たものは、布団でのり巻きにされた幸せそうなバカ面の猟師と、布団ごと丸呑みしていた大蛇でした。
大蛇ががぶっと猟師の頭を呑み込もうとしたところでとっさにドーンと銃で大蛇の頭を吹き飛ばしたのです。

寸でのところで命が助かった猟師が思わず叫びました。
なにするんだ!今から俺の恵方巻きを食らわしてやるところだったのに!

恵方巻きを食べて丸々と太った大蛇が「つちのこ」の正体だそうでございます。



さあ、明日はヒラメ釣りだ。

買い物してして

こういうの好きかな