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2004/6/14(月)富浦の手漕ぎボートでアカエイを釣る


よく晴れた梅雨の谷間、千葉県富浦市へ某川で釣ったハゼを持って、手漕ぎボート釣りへいってきた。狙いは当然マゴチ。前回の釣行では、ハゼをエサにアナゴが食いついてきたが、今回こそはマゴチが食いつくんじゃないかと夢見がちに富士屋ボートの船に引かれて海へ出た。

マゴチを狙う前に、ちょっと寄り道をして最近特に釣れているらしいアジを狙ってサビキ釣りをおこなう。ポイントにはすでに幾艘ものボートが釣り糸を垂らしており、私も周りのボートとつかずはなれずの距離のところでアンカーを下ろして竿を出した。この日の海は、今まで富浦へ何度もきた中で一番穏やかな海で、いつもは漂流するかもしれないという危険と隣り合わせの釣りだか、今回はまるで湖でワカサギでも釣っているかのような静かさだ。海が澄んでいるので、湖面のような海面下を泳ぐ魚がチラチラと輝いて見える。イワシの群れだろうか。


湖のような海面。 アジの群れが散らないように固まって釣る。

サビキ仕掛けを海底まで下ろし、少しリールを巻いてやると、すぐに小気味のいいアタリがきた。アジというよりはカワハギに近い感じのヒキだ。シマダイだろうか。ヒキを楽しみながら慎重にリールを巻き続ける。その日の最初の一匹は、釣りに何回来ても格別のうれしさがある。陳腐な例えだが、NASAの関係者が、スペースシャトルが何回宇宙にいっても、無事に帰還したときはやっぱりうれしいみたいな。例えの方が話がでかいな。

はたして、真っ青な海面から顔を出したのは、海の色を濃縮させたような鮮やかな鱗のスズメダイだった。初めて釣る魚だ。食べられるのだろうか。周りのボートでも同じようにスズメダイが上がっている。丁度またボートを引き連れてやってきた富士屋ボートの兄ちゃんがいうには、「地元じゃ食べないねえ」とのこと。地元で食べなくても、ベトナムあたりだったら丸揚げにして食べていそうなのだが、小骨が多そうなのでリリースした。

なにが釣れるか。なにも釣れないか。 スズメダイ。タイと名は付くが食べないらしい。

その後も今日はどういう訳かスズメダイのオンパレードで、釣っても釣ってもスズメダイ。コマセの入った仕掛けを入れた途端に水面近くまでスズメダイが集まってくる始末で、アジのタナである海底付近に仕掛けが着くまでにスズメダイが食いついてしまう。ヒキが結構いいので釣って面白いのだが、二匹三匹といっぺんにかかって仕掛けがすぐグチャグチャになってしまうのにはさすがに閉口した。

こうなってしまったら仕掛けを交換するしかない。 エサを入れた途端に集まってくるスズメダイ達。

二時間ほどスズメダイと格闘し、それでもどうにか三匹ほどの小さなアジを釣り上げたところで、マゴチ狙いのポイントへ移動。

当たり前だけれど新鮮だ。 エサにするにはちょうどいい。

ポイントまで引っ張ってもらったら、某川産のハゼとさっき釣ったアジを針につけて投入。今日は風も穏やかなので、アンカーをいれない流し釣りスタイルで、広い範囲をゆらゆらと漂いながらマゴチを狙う。マゴチ狙いは置き竿スタイルなので、空いた手でシロギス狙いの竿を出して、マゴチのエサと夕飯のおかずを補充。

シロギス。 イカは釣れなかった。

流されては戻り、流されては戻りを繰り返しているうちに、一番細い、ワカサギ釣りにも使っている黄色と黒のシマシマ竿が、海面下へ向かって弓なりになっている。根がかりでもしたのかなと竿を手に持って少しリールを巻いてみると、もったりとしたなんともいえない感触が伝わってくる。かなり重い。長靴でも釣ったかなとグリグリ巻いていたら、急に長靴が走り出した。イヤ、長靴は単体では走らない。魚だ。かなりの大物に間違いないのだが、なにせ竿はワカサギ用。短くて使いやすいしどうせ大物釣れないだろうという理由で使った私が悪かったのだが、明らかに竿が魚に負けている。原チャリで曙と二人乗りするくらい無理がある。パンクしそうだ。右へ左へ悠々と水中を泳ぐまだ見えぬ大物と5分、10分と綱引きをしていると、富士屋ボートの船が近くまできて船を止めた。どうやら松方弘樹よりもきれいに曲がった竿を持つ私の行く末を見届けるつもりらしい。どう考えても我が人生で一番の大物、どうせならビデオ回して欲しいくらいだ。

針にかかったのがマゴチにしては重すぎる竿を持ってから15分ほどして、どうにか少しずつリールが巻けるようになり、慎重に慎重にたぐり寄せると、透き通った海の中から四角い魚があがってきた。ヒラメに違いない。今まで以上に慎重なやりとりをして、水面にあがってきた魚をよくみると、それはヒラメではなくエイだった。

エイ。どうみてもエイ。 近くでみてもエイ。

エイ。アカエイ。尻尾に強力な毒針を持つスーパーヘビーな鱗なき魚、エイ。たまに防波堤とかで釣ってしまって困っている人を見かけることはあったが、今日の今日まで所詮他人事だと思っていたエイ。しかし、今、私が握る竿の先から伸びる釣り糸の先には、エイという名の「困難」がつぶらな瞳でボクを見ている。取り込んでもしょうがない。毒針に刺されたら笑い事ではすまない大惨事だ。スキーで骨折するよりたぶん哀しい。このままハリスを切ってリリースしよう。さようなら人生最大の獲物。

「煮て食うとウマイよ!」

声のした方を振り返れば、いつのまにかすぐ近くまできていた富士屋ボートのにいちゃんが船上でニコニコしている。どうやらエイは美味しいから持って帰って食べろといっているようだ。スズメダイは食べない魚だといっていたが、エイは煮て食べる魚のようだ。どうしよう。

「はやく網ですくっちゃいなよ!煮て食うとウマイんだよ!」

仕方がない。竿を左手に持ち、右手でタモを海面に伸ばす。しかし、タモの直径よりエイの直径の方が微妙に大きい。建坪率110%。いっそハリスが切れないかなと期待しつつも何度かトライをしてどうにかエイをタモに入れることに成功。軟体なのでUの字になって収まった。重い。

「尻尾に毒があるから切り落としちゃって。煮て食うとウマイから!」

いわれるがままに、メゴチばさみでそっと押さえたエイの尻尾を、根元からマゴチの血抜き用のためだけに持ってきていたナイフで切り落とす。エイが尻尾をバチンと動かせば、毒針がナイフを持つ右手にグサッと刺さる距離なのでかなりおっかない。地味だけれどおっかない。Tさんだったら一発だ。くっきりとカラーで目に浮かぶ。

カナヘビの尻尾ほどではないにしろ、思ったより簡単に尻尾の切断は成功。メゴチばさみで掴んでなるべく遠いところに放り投げる。ネズミ花火とエイの尻尾は人に向けて投げてはいけない。
※マネをしてエイに刺されたり、食あたりしたり、寄生虫を煩ったりしても責任持てません。すべては自己責任で。アカエイは本当に危ない生き物です。

どうにか釣り上げたエイ。網からはみ出ている。 久々に重いクーラーボックスでの帰宅だ。

ビニール袋に詰めたエイをクーラーボックスにしまい、本日の釣り終了。そのまま富士屋の船につながれて陸へと戻る。初夏の日差しにやられたボクの頭の中には、だいぶ前のカクテルバーのCMが流れていて、永瀬がボクに語りかけてくる。「エイだろ、エイ」。

結局、いつものようにマゴチは釣れなかった。ボートを引っ張る富士屋の兄ちゃんの背中は、どことなく満足そうだ。エイの煮たヤツが好きなんだろうな。さて、家に帰って煮て食うか。

煮て食べます。はい。 輪ゴムしていたら輪ゴム焼けした。


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