2009/1/11 富津の浜新丸で食わせショウサイフグ釣り乗合船

釣りは「どこで何を釣るのか」というところから始まる

1/10は三連休の初日。連休中日に誰からともなく修行僧と呼ばれる不思議な人と京急大津の石田ボートから手漕ぎボートに行く予定だったのだが、明日はどうも風が吹きそうな天気である。江戸時代なら風が吹けば桶屋がもうかったのだが、大津では風が吹くとボートがでられない。

とりあえずいくだけいって、もしボートがでられなかったら隣の小川丸から乗合船でタチウオにするという荒業も得意なのだが、それはもう我が人生の中でやりきった感がある。それにタチウオは水深が急に深くなって150メートル前後らしい。手持ちの手巻きリールだとちょっとつらい。というか糸が足りない。電動リールを借りてもいいけど、まあそれなら最初からなにか普段釣らない魚を乗合船で狙ってみようとなったのが夜8時。

さてなににしようと悩んだ結果がショウサイフグ。ボートなどで釣っても処理ができないため食べられない魚だが、乗合船なら船頭さんが処理してくれる。ちなみにショウサイフグはカットウ釣りと食わせ釣りの2種類があるらしいが、どうせならより釣りっぽい食わせ釣りがいい。そういえばショウサイフグは数年前に一回やったけれど、どんな釣りだったかすっかり忘れた。

食わせフグなら川崎丸だなと思って電話したらなんと満員で断られてしまった。食わせなのに葛藤しながら急遽ネットで検索したり人に聞いたりして、どうにか夜九時という船宿的にははなはだ迷惑な時間に浜新丸というはじめての船宿を予約できた。前日にこんな感じなので、当然それから準備やなんやで、結局3時間くらいしか眠れなかった。

さてここまでに、釣りものの選択肢として、大津の手漕ぎ、タチウオ、食わせフグ、延期の4種類があったことを覚えておいていただきたい。

富津港の風がハンパじゃない

朝四時に家を出て、途中のコンビニで托鉢をしていた修行僧をピックアップ。お正月に伊東で潜ってきたばかりの修行僧から冬の素潜りの楽しさ、ウエットスーツの温かさなどを聞かされる。興味はあるがウエットスーツを買う余裕はない。あと友人のカメラマンがのりまきをおかずにご飯を食べるとか、チャーハンをおかずにご飯を食べるとか、ご飯をおかずにご飯を食べるとかの話。

「とりあえず目標は10匹かなあ」なんていいながら館山自動車道を走らせるのだが、風で車がフワンフワンと揺れまくる。

五時半、漁協前の駐車場について、車のドアを開けたら風が強くてドアが戻された。バタン。

大丈夫なのか。

なんだこの風は。ビュービュー吹き荒れる風に本日の釣りが不安になるも、「手漕ぎボートにしなくてよかった!」というプラス思考で生きていきたい。でも目標は三匹に下降修正させていただく。

いっそ強風で中止にならないかなあと思ったのだが、マシュマロマンみたいに着膨れしたおかみさん曰く、今日は出船するそうなので、乗船料9000円を支払う。どうも今日は高いフグになりそうな予感である。

受付は駐車場入口のおかみさんまで。

甘エビの殻むきをする

風向きを考えないでたちしょんをしたら大惨事になるような強風の中(してませんが)、まだ真っ暗な港に着く。

風って写真に写らないんですね。

乗船してまず渡されたのが、氷と冷凍の甘エビと餌箱と部屋とワイシャツとタワシ。最後の三つはうそだ。そういえば電話予約したときに、「えびの殻むきがあるからハサミを持ってきてね」といわれたがこれのことか。

お弁当じゃないよ。

凍った甘エビを海水で溶かし、一匹づつ殻をむいてハサミで三等分にしていく。当たり前だが指先がかじかんでかなりつらい。常連っぽいおっちゃんは手術用の手袋をしていて、仲間内から「先生!」なんて呼ばれていたが、話をなんとなく聞いていたらどうやら本物の医者だった。

甘エビのカクテル。

なかなか美味しそうな甘エビなのでこのまま食べてしまいたいくらいなのだが、この一切れ一切れが一匹のフグに化けると思うとワクワクする。ワンパックで30匹だとすると、餌が90個できるから、これだけでフグ90匹!

なんていう甘エビだけに甘い考えはこの強風の中でどれだけ通用するかはわからないが、とりあえず出船前はどんな想像も自由なのだ。

先生!

ショウサイフグの仕掛けは胴突三本針

今回の釣りは急に決まったので仕掛けを作る余裕なんか当然なく、船宿で買うことになったのだが、ここでの仕掛けは丸海津13号の胴突仕掛け。ハリス4号とけっこうな太さである。海を挟んだ対岸の金沢八景の野毛屋監修というところが渋い。ちなみにまわりのひとはエダス短めの5本バリが多かった。ちなみに錘は20号。

300円。

富津港を出船します

朝日も登った7時、タチウオ船狙いの船に続いて定刻通りに港を出船。

富士山をみるととりあえず写真をとってしまう派です。

 

朝焼けと修行僧。だれのためにもならない写真だ。

ポイントにつくまでの間、常連さん達の「この船はピー千万でピー年ローンらしいぞ」なんていう話を聞きながら、ちょっと狭い船の中で一休み。この船がヘタなフェラーリよりも高いと思うと、窮屈さも気にならない。

釣り船って高いんですね。家が買える金額だ。

さてこの船の中にいる間にひとつやっておくことがある。フグの釣り方を聞いておくことだ。なにせ急だったのでなーんにも下調べをしていない。修行僧もショウサイフグは初めてである。

しかし幸運にも、たまたま隣にいた常連っぽいおっちゃんに聞いてみたら、この人は報知新聞のライターで、ショウサイフグのことを書いた本もでているらしい。

本日の師匠はあなたに決定!

なんでもタナはべた底で、おもりを底につけて道糸を「張らず、弛まず」の状態にし、竿先の曲がりであたりをとるらしい。

「張らず、弛まず」、なんだか人生における格言のような難しいことをいわれてしまった。相田みつをか。正直よくわからなかったが、ショウサイフグだけに詳細はやってみればわかるだろう。

とりあえず天気はいい

ここがどこなのかちっともわからないがポイントに到着。船の外に出てみると風はだいぶ弱まり、海もそれほど荒れていない。さすがにうねりは多少残っているが、これなら釣りになりそうだ。

予想よりはいい天気。

船宿指定の三本パリに甘エビをつけて、さっそく釣り開始である。

この甘エビがフグに化けるわけですよ。

 

ひゅるるるるとおもりを落として棚をとる。水深約15メートル。ここで道糸を「張らず弛まず」にするのだが、はてどういうことだろう。

わからなーい。

まあようするにおもりがそこに付いていればいいのかなと、おもりの重さを感じる程度をキープするように努力する。とはいってもうねりがあるので、そううまくはいかないのだが。

あ、ふじさん。

釣れないので移動を繰り返す

がんばってフグのあたりをとろうとするのだが、海底にはどうもカワハギがいるらしく(報知新聞の人が尺サイズのカワハギ釣っていた)、餌がすぐにとられてしまう。そして大潮ということで仕掛けが流され、そこらじゅうでお祭りが連発。肝心のショウサイフグも今日はどこにいるのやらで、船は移動を繰り返すばかり。

天気は快晴。しかし船上はどんよりとした空気。

フグなんて狙わないときにはやたら釣れるのに、狙った時には全然釣れない。なんどか移動を繰り返すうちに風や波も収まって、潮も緩くなってきた。船も一か所に集まってきて、ここからがチャンスタイム!と思ったのだが、全然ダメ。

まあ全然ダメといっても私の話で、周りの常連さんたちは渋いながらもポツリポツリと本命を釣り上げており、私たちがいる左舷側で坊主なのは私と修行僧だけだ。現在の目標は「とりあえず一匹!」という、マダイ釣りのような設定値だ。

こんな天気だったら大津で手漕ぎボートいっておけばよかったという後悔の念が竿の感度を鈍らせる。どうも昨日の強風で底あれしてしまい、群れが散ってしまっているらしい。

どの船もお客さんいっぱいでした。

修行僧が先にゲット

場所を移動するたびに、「これは外道すら釣れない丸坊主だろうか」という不安が強くなる。修行僧と私はダメなもの同士が話しあっても埒が明かないので、修行僧は左の常連さん寄りに、私は右側の常連さんにと微妙に座席を動かして、釣れている人から学ぼうとする。

とりあえず一つわかったことは、我々以外は誰もキス竿を使っていないということだろうか。私のキス竿は胴から曲がりがちのため、あたりを感じてても合わせが遅れる感じがして、どうにも餌だけとられてしまう。いや根本的な問題が私の中に多数あるのだろうが。ちくしょう、カットウ釣りにすればよかったか。

そして修行僧が「今日の夕飯は肉だ!」と、力強くもむなしい宣言をしてからしばらく、一匹目のショウサイフグを先に釣られてしまった。肉はどうした。

ガーン。

こういうダメな状態のときに先に釣られるとかなり焦る。一と二は大差ないが、ゼロと一は大違い。ゼロには何をかけてもゼロのまま。

いやマイナス思考はよくない。今こそ時合いだ、チャンスなのだ、と集中してしばらく、私にも待望の一匹目が無事釣れた!

やっぱり一匹目ってうれしいね。

一匹釣れればもうこっちのもの。あとは数を伸ばすだけだぜ!とまたプラス思考に切り替えたのだが、餌をワンパック使い切っても追加のフグは釣れず。餌の数だけあたりがあったはずなのだが、釣れたのは最初の一匹のみ。腕の悪さを実感せざるを得ない結果である。

二パック目に突入。

 

今日のおやつはアルフォート。アラフォーとは関係ない。

最後に釣れたでかいやつ

そのままのペースでだらだらと時間だけが過ぎていく。あまりに釣れないので眠くなるのだが、釣れている人はちゃんと釣れているんだよね。集中力の差ですかね。

最後のポイントは30メートルと深場の根回り。底につけるとトラギスが釣れちゃうので気を付けてくださいというアドバイス通りにトラギスを数匹釣る。もう魚が釣れればトラギスでも十分うれしい。

やっぱり外道でもなんでも釣れた方が楽しいなあなんて思っていたら、今日一番のアタリがきた。グッと合わせてリールを巻くと、でかい。これはショウサイフグではなくアカメフグか、あるいはいっそトラフグかと思って心の中で大騒ぎしながらリールを巻く。

上がってきたのは、なんだこれ。

これは、まさか。

良型の、ベラでした。

ぎゃふん。

釣り終了。

ふぐのバカ。修行僧のバカ(やつあたり)。

そしてまさかの大逆転

誰かと釣りに行くと、勝負っていうわけではないけれど、どっちが多く釣ったか、どっちが大きいのを釣ったのかっていうのはどうしても気になるものである。

修行僧の釣果は、三匹。修行僧と釣りに行くと、大変残念ながら、修行僧の方がよく釣る場合が多い。釣れている時合いに写真とったりリアルタイム更新とかしている私が悪いのだが。

三匹かあ。やるなあ。

そして私のバケツを見てみると、フグが4匹。4対3で私の逆転勝利である。

いつの間にか4匹に!

すごいでしょう。

ええと、ネタをばらすと、あまりに釣れない私を不憫に思った報知新聞のライターさんが、自分が釣った中から3匹をくれたのでした。まあ人からもらうのも釣りの腕ですよね(明らかに違う)。

で、フグをくれるのはいいんだけれど、「ほら、あのこが一匹しか釣れないから三匹あげたんだよ!」という話を、船長はじめ船中のいろいろな人にいっていて恥ずかしかった。この話、きっと明日までには港中の人が知ることになるだろう。そして私は「ショウサイフグが一匹しか釣れなかった人」として語り継がれることになるであろう。

ありがとう、報知の人!

かかったお金は船代が9000円、仕掛けが300円、往復の交通費が5000円くらい。さてふぐは一匹いくらでしょう。という問題は計算してはいけません。

船を降りたところで、船長さんがフグを捌いてくれます。

 

この頭の数だけフグが釣れたはずなのだが。

 

アツアツの缶コーヒーがもらえます。

帰る前に報知新聞のライターさんにお礼をしつつ、どうすればもっと釣れるのかを聞いたところ、道糸の「張らず弛まず」の真意がようやくわかった。わたしは錘を海底につけて、おもりが浮かない程度のテンションをキープして糸を張っていたので、竿先はある程度まがっていた。だがライターさん曰くそうではなくて、おもりが底について、道糸は張っているけれど、竿先がほとんど曲がっていない状態にしておくのが大切なのだという。

竿が最初から曲がっていたら細かいあたりはとれない。まがっていない状態をキープしてこそ、竿先に出る細かいショウサイフグのあたりがわかるのだ。ああ、最初に話を聞いたときに曖昧に終わらせないで、ちゃんとここまで聞いておけばよかった。そうすれば倍は釣れたことだろう。ってそれじゃ二匹か。

ライターさんは「ショウサイフグは腕の差が如実に表れる釣りなので楽しいよ」というが、確かにそのようである。本日の竿頭は15匹。

ラーメン食べた

帰りに富津港にあるラーメン屋でノリラーメン頼んだら、海苔がすごかった。

麺にも海苔が練りこまれていた。

あさりラーメンと海苔ラーメンがうりの店。私がノリラーメンを先に頼んだので、修行僧はアサリラーメンかなと思ったら、辛みそラーメンを頼んでいた。いいけど。

インナーに着るこういう服、あったかそうね。

ショウサイフグの鍋(ふぐちり)とお刺身

釣ったフグ(と、もらったフグ)は、ふぐちりとお刺身で。カワハギだったら肝あえが好きなのだが、フグの肝あえだと最後の晩餐になってしまう。

プリプリ。

次の日の方が甘味がでるよといわれたけれど、一匹分はその日のうちに。ぷりぷりしすぎていて薄作りが作れないほど弾力がすごい。ポン酢とアサツキで食べたが、脂っぽさが一切ないのにうまみが強い。なるほどこれはおいしい魚だ。10切れくらいいっぺんに口に放り込みたい。

一匹分は次の日に食べたのだけれど、そちらは弾力がなくなりしっとりとしたが甘味が断然強くなった。初日に弾力を楽しむか、二日目に甘味を楽しむか、そこが問題の魚である。

白い鍋。

鍋は昆布で薄めにだしをとり、そこに日本酒を少し入れ、ぶつ切りのフグ二匹と刺身の残りの中骨を入れる。味付けは塩だけ。

ふぐの味を壊さないよう、具は白菜、ネギ、豆腐のみ。

味はというと、うまい。脂っ気が一切ない鍋なのだがうまみがすごい。魚の臭み一切なし。

なにがうまいって、鍋の汁がうまい。

フグの身は魚っぽくない筋肉質。

曇った。

締めの雑炊ももちろんうまい。米がフグ味になっている。なるほど、フグ鍋は雑炊のためにあるのかもしれない。鍋の中身がなくなるのがもったいなくて、つい水を足しそうになってしまう。

雑炊だけに増水。

ほかの船の結果

気になったので、私たちが選択しなかった船がどうなったかを調べてみた。

○石田ボート:マアジ 18〜26cm 51匹(朝北風多少波有のち穏やかに)

○小川丸:タチウオ 2〜12本(半日船)

○浜新丸:タチウオ 4〜29匹

ええと、フグを釣る腕も悪かったですが、釣りものの選択も悪かったようです。

その日に釣れる魚を選ぶことも釣りの実力ですなあ。

※ところでフグをくれたいい人、誰かと思ったら塙実さんという有名な釣り名人でした。本ってこれか。左上のリンクからアマゾンで買うといいと思います。

買い物してして

こういうの好きかな